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中小企業は「ひとり情シス問題」にどう向き合うべきか  〜属人化した努力から、組織として回る仕組みへ

  • 2026年05月18日
  • 中小機構 中小企業支援アドバイザー 村上知也

中小企業は従業員数が限られているため、社内に情報システム担当者がいないケースが多く見られます。担当者がいたとしても、他の業務と兼務しており、実質的に一人で対応している「ひとり情シス」と呼ばれる状態も少なくありません。

近年、ITに関する社内からの問い合わせや、システム導入の指示が増加していることから、ひとり情シスにかかる負荷は非常に高まっていると予想されます。本記事では、ひとり情シスが置かれている現状を整理し、今後どのように課題と向き合っていくべきかについて考えていきます。

ひとり情シスは増えている

ひとり情シスの現状について、中堅・中小企業のIT活用実態を調査する第三者調査機関ノークリサーチ社から、『「ひとり情シス」は増えているのか?減っているのか?IT管理/運用の現場で起きている変化』というレポートが発表されていました。
元レポートは以下のURLです。
https://www.norkresearch.co.jp/pdf/2025DXAI_user_repex.pdf

以下のグラフは、年商500億円未満の中堅・中小企業全体に情シス担当の人員数を聞いたものです。これだけデジタル化のニーズが高まっている中、1名で担当されているケースが21.3%から24.5%に増えています。そもそも情報システム担当を置いている企業の割合が減少しています。外部に委託しているケースも増えている可能性があります。

(出典)ノークリサーチ調査

さらに情報システム担当は兼務の場合も多いと考えられます。特に企業規模が小さくなると、一人で何でもこなさないといけないためです。実際にデータを確認すると、売上50億円未満の企業では、61%の企業で情シス担当は兼務でした。

著者は会社員時代にIT企業勤務で、システム営業の部署にいる時に、部署内のネットワーク管理の仕事を担当していました。新しい人が配属されたらIPアドレスを割り振って、メールアドレスやグループのメーリングリストを作成していました。今思えば、なぜ営業職の私が担当していたのかなあ、と思ってしまいますが、多くの企業でこういった兼務は状態化しているのでしょう。

ひとり情シス問題は、担当者個人のスキルや努力の問題ではないと考えます。むしろ、経営と組織の設計の問題であり、向き合い方を誤ると、情報セキュリティ事故や業務停止といった経営リスクへ直結します。本記事では、中小企業が一人情シス問題にどのように向き合い、どのような考え方で対策を進めるべきかを、整理します。

なぜ中小企業のひとり情シスは限界を迎えやすいのか

ひとり情シスが疲弊しやすい最大の理由は、担当範囲の広さにあります。パソコンやスマートフォンの手配・設定、クラウドサービスのアカウント管理、日々の問い合わせ対応、セキュリティ対策、ベンダーとの調整や契約更新まで、本来であれば複数の役割に分かれる業務が、一人に集中します。総務的な仕事と情報的な仕事が混在するのもつらいところです。

これらの業務は、突発対応や割り込みが多く、計画的に進めにくいという特徴があります。今日は新しいシステムの検討を行おう!と思っていても、現場からは「パソコンが動かない!」「システムが動かない!」など日常的な相談が寄せられます。その結果、目の前のトラブル対応に追われ、ルール整備や改善、予防策といった中長期的に重要な取り組みが後回しになります。業務が属人化し、担当者本人しか分からない設定や運用が増えていくのも、このことが原因ではないでしょうか。

さらに、経営者側から見ると、ITは「何が危険で、どこに投資すべきか」が分かりにくい分野です。専門的な説明になりがちなため判断が後回しになり、結果として「現状維持で何とか回してほしい」という無言の期待が、ひとり情シスに集中します。

ひとり情シス問題は「人の問題」ではなく「仕組みの問題」

ここで重要なのは、ひとり情シス問題を個人の責任として捉えないことです。担当者を増やせば解決するように見えるかもしれませんが、属人化した運用や曖昧な優先順位のまま人を増やしても、根本的な解決にはなりません。

中小企業がまず行うべきは、「すべてを完璧にやる」ことを前提にしないことでしょう。IT業務には優先順位があり、事業継続や情報漏えい防止といった致命的なリスクへの対応が最優先されます。生産性向上やDXは重要ですが、土台が不安定なままでは、かえって負担を増やす結果になりかねません。

また、一人情シス対策の本質は、努力ではなく設計にあります。誰が担当しても同じ結果になるよう、ルールや手順、判断基準をあらかじめ決めておくことが、属人化を防ぐことにつながります。

中小企業が現実的に取るべき対策の考え方

対策を進める際には、まず「守り」を固める意識が欠かせません。退職者のアカウントが確実に停止されること、重要なクラウドサービスに多要素認証が設定されていること、業務データが定期的にバックアップされ、復旧手順が分かっていること。これらは高度なIT施策ではなく、最低限の経営リスク対策になります。

次に重要なのは、日常業務の負担を減らすことです。一人情シスを最も消耗させるのは、終わりのない問い合わせ対応です。問い合わせ窓口を一本化し、よくある質問を簡単な手順書として共有するだけでも、業務負荷は大きく下がります。さらに、端末やソフトウェア、申請方法を標準化し、選択肢を減らすことで、運用を安定できるのではないでしょうか。

また今後は生成AIによる問い合わせ対応の効率化も期待できるでしょう。ただしそのためには今までの問い合わせの内容や、マニュアルをデータ化し、AIに読み込ませておく必要があります。

すべてを社内で完結させようとしない姿勢も欠かせません。一次対応や定型作業を外部に委ね、専門性が求められる領域はスポットで専門家を活用する事も考えたいです。そうすれば、担当者がいなくなったとしても、外部に委託することで対応が可能になるでしょう

こうした前提で体制を用意することで、一人の情報システム担当でも持続可能になっていくのではないでしょうか。

中小機構でも中小企業の経営やITに関する相談センターが用意されています。あくまで相談だけではありますが、何回相談しても無料ですので、ITのことでお困り事があれば、ぜひ一度ご利用いただければと思います。

IT経営サポートセンター
https://it-sodan.smrj.go.jp/index.html

まとめ

中小企業でIT担当者が一人や兼務となる「ひとり情シス」が増加し、業務の属人化や過重負荷が大きな経営リスクとなっています。解決には個人の努力に頼らず、組織的な仕組み作りが不可欠ではないでしょうか。 まずはセキュリティ等の「守り」を優先し、業務の標準化や外部委託、AI活用などで負担を軽減すべきです。特定の個人に依存せず、誰もが運用できる持続可能な体制を構築することが、企業の安定と成長につながると考えます。

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