特集

食料品の消費税率1%に向けてのデジタル面の対応を考える 〜レジや会計、ECの準備

  • 2026年10月20日
  • 中小機構 中小企業支援アドバイザー 村上知也

2027年4月から2年間、軽減税率の対象である飲食料品の消費税率を8%から1%に引き下げる法案が国会に提出されています。本記事では、制度が実施された場合に必要となるデジタル面での対応について整理します。
なお、現時点では法案の審議中であり、制度の実施は確定していません。実際の対応は、法案の成立と制度の詳細を確認した上で進める必要があります。

食料品の税率が変更されるとどうなるのか?

税率が変更されると、店内の表記やチラシの変更、従業員への教育等、様々な対応が必要になります。ただ本記事では、デジタル面に絞って対応を考えていきます。

また税率が変更されると、8%から1%に変更するだけではなく、社内のほかのシステムとの連携も見直す必要があります。本来は検討やテストに時間がかかると考えておきましょう。

一方、小規模企業では、利用しているレジや会計ソフトによっては、既存システムの設定変更やアップデートで対応できる場合もあるでしょう。そこで今回は、まず現在利用しているシステムを確認し、どのような変更が必要になりそうかを考えていきます。

レジの設定はどうなる?

レジの税率の切り替えの設定は、レジメーカーによって異なります。古いメカレジであれば、自身でマニュアルを読んで税率を切り替えるものが多いです。

以前、消費税率が引き上げられる直前に、専門家派遣で支援先のお店を訪問したことがあります。そのお店では、レジの設定変更の準備ができていませんでした。また、レジが古く、マニュアルも見つからず、結局レジメーカーに連絡して派遣設定をお願いすることになりましたが、このお店は税率を上げるのが1ヶ月遅れてしまいました。

レジメーカーも繁忙期でしょうから、今回も直前期にお願いしても時間がかかることが予想されます。必要であれば早めに手配しておきましょう。

一方で、最近よく活用されるタブレット型のレジなどであれば、税率の設定は、クラウド上にて自動で反映されるケースも多いです。

例えばAirレジの設定画面を見てみましょう。現時点では、標準税率10%と、軽減税率8%が設定されており、お店側ではこのマスターは変更できません。

今後、法案が成立した場合には、飲食料品の1%、新聞の定期購読などに適用される8%、標準税率の10%という3つの税率が併存することになります。レジ側で具体的にどのような設定変更やアップデートが行われるかは、各レジメーカーの案内を確認しましょう。

では、自動設定だけで終わるのでしょうか。上記はあくまで税率マスターですので、お店側では商品マスターの税率を設定し直す必要が出てくるでしょう。

例えば焼き鳥屋さんの例で設定画面を見てみると、商品ごとに、税率設定があります。イートインとテイクアウトがある場合は、商品ごとに10%標準税率か軽減税率かを設定していましたが、ここでテイクアウトの8%(軽減税率)の商品を、1%(食料品の軽減税率)に切り替えていく必要があるでしょう。

商品マスターの税率変更については、店舗側で一件ずつ設定し直す必要があるのか、レジメーカー側で一括して自動変更されるのか、現時点では分かりません。

新聞を販売していない飲食店であれば、商品に設定する税率は基本的に10%と1%の2種類となるため、既存の軽減税率8%の商品を1%へ自動で切り替える仕組みが提供される可能性もあります。

一方、新聞を販売する店舗では、8%の設定を残したまま、食料品だけを1%に変更する必要があります。店舗側で必要となる作業はレジによって異なるため、制度確定後のレジメーカーの発表を待って確認しましょう。

他にも、税率ボタンが「標準税率」や「軽減税率」といった表記だとわかりにくいので、「イートイン」「テイクアウト」など、ボタン名を変更できるレジもあります。新聞を取り扱う店舗では、新しく新聞用のボタンなどができる可能性もあるでしょう。

なお、税率変更への対応を機にレジの更新を検討する場合、スマートレジの導入については、デジタル化・AI導入補助金に加点措置が設けられています。この措置については、今後掲載予定の記事で詳しく紹介します。

会計ソフトはどうなる?

それでは会計ソフトの方はどうでしょうか? 同様に税区分のマスターを会計ソフトのfreeeで見てみます。
10%と8%の軽減税率がありますが、それ以外にも旧税率の5%なども残っています。レジと違って会計は過去のデータの蓄積が求められますので、旧税率時代からマスターは残っています。

こちらも新しい制度が確定したら、1%の食品軽減税率が登場するでしょう。

新しい税区分ができると、実際に税率が変更された日以降に入力することになるでしょう。ただしレジと違って、会計ソフトでは「日付のまたぎ」に注意が必要です。すでに新税率になっている日付でも、前月の領収書や請求書は旧税率で入力する必要があるためです。

例えば2027年4月から税率が変わり、20日締めで請求業務を行っている場合を考えてみます。前月(3月)21〜31日分は8%、当月(4月)1〜20日分は1%と、2つの税率の書類が同時に出回ることになります。確認・入力の際は注意が必要です。

なお、税額の表記方法などについては、国税庁のサイトなどから最新の情報を確認してください。

参考:国税庁「消費税率引下げ特設サイト」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/zeiritsuhikisage.htm

EC(ネットショップ)の場合どうなる?

ECは注文を受けてから発送までに時間がかかることもあります。そのため、その間に税率が変更されるケースへの対応に注意が必要です。

ネットショップでは注文日ではなく「発送日」で税率が処理されますので、3/31に8%表示をしていた商品が売れて、4/1に発送されると1%で処理することになります。

ただし、前回の消費税率変更時には、一定の条件を満たせば、商品を税率変更日後に発送した場合でも旧税率を適用する「通信販売の経過措置」がありました。今回も同様の措置が設けられるか、今後の制度情報を確認する必要があります。

まとめ

小規模なお店であれば、消費税率の変更に伴うシステム対応の影響は、それほど大きくないかもしれません。それでも、本記事で取り上げたポイントには気をつけておきたいところです。

また、本記事ではデジタル面の視点だけでしたが、実際はそれ以外に実施することが増えるでしょう。

メニューの表示、店頭のPOPの変更、そして何より対応する従業員の教育などには手間がかかりそうです。

現時点では法案の審議中ですが、システムによっては対応に時間を要する可能性があります。まずは現在利用しているレジや会計ソフト、ECシステムなどが税率変更にどのように対応する予定なのか、情報収集を始めておくとよいでしょう。

特に支援機関の皆様は事業者の方々がどのような対応が必要になるのかを早めに把握し、丁寧に伝えていくことが大事です。

関連おすすめ