初選出のセキュリティ脅威とは!? 〜2026年のセキュリティ10大脅威が発表されました〜
- 2026年06月15日
- 中小機構 中小企業支援アドバイザー 村上知也
- セキュリティ

IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)より2026年の情報セキュリティ10大脅威が発表されました。組織編と個人編のランキングにどのような変動があったのか、確認していきたいと思います。
連続選出の脅威が大半の中、新しく脅威がランクイン
毎年発表されるセキュリティ10大脅威の2026年版がIPAから発表されました。
https://www.ipa.go.jp/security/10threats/10threats2026.html
セキュリティの脅威について、昔はウィルスやワームの名前そのものが挙げられていることもありました。しかし、攻撃手段は多様化してきたため、そもそもの脅威自体が挙げられるようになりました。
そのため、毎年大きな変化はなくなり、◯年連続という脅威ばかりになっており、入れ替わりは少ないです。ここ11年間で11年連続掲載されているものもあります。ランサム攻撃、標的型の攻撃、内部不正による情報漏えいといった具合です。昨年もランサムウェアの攻撃で大手企業のシステムが止まったニュースがいくつか流れていました。
さらに一つ一つの脅威というより、組み合わせての脅威が増えています。標的型攻撃でログイン情報を獲得して、その後にランサム攻撃を行うなどです。
しかしその中で、初選出の脅威が少しずつ登場しています。2025年は「地政学的リスクに起因するサイバー攻撃」が初登場でした。2026年も継続的に選出されています。
そして、2026年初選出となったのは、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」です。
AIの利用をめぐるサイバーリスクとは
AIに関するサイバーリスクについて考えてみます。
生成AIはビジネスの生産性を劇的に向上させますが、その一方でセキュリティ上の新たな脆弱性や攻撃手法を生んでいます。このリスクは、①利用者の不注意による内部からの漏えい、②攻撃者によるAIの悪用、そして③AIシステム自体への攻撃という、3つの視点で確認することが求められます。
① 利用者および組織側による不注意やリテラシー不足に起因するリスク
AIを業務に導入する際、最も身近で発生頻度が高いのが、従業員の不注意やリテラシー不足に起因するリスクです。
まず、機密情報や個人情報の流出が深刻な懸念となっています。多くのAIサービスでは、入力されたプロンプトが再学習に利用される可能性があり、社外秘のプロジェクト資料や顧客データを安易に入力することで、意図せず情報が外部へ漏えいする事態を招きます。
次に、生成物の取り扱いによる権利侵害のリスクが挙げられます。AIが生成したテキストや画像が、既存の著作物や他者の商標、肖像権を侵害している場合があり、これを確認せずに公開することで法的トラブルやブランド毀損に発展する恐れがあります。
②攻撃者による「AIの悪用」のリスク
一方で、サイバー攻撃者側もAIを強力な武器として活用しており、攻撃の質と量が劇的に向上しています。
特にフィッシング詐欺やビジネスメール詐欺の高度化は顕著です。従来のような不自然な日本語によるメールは減少し、大規模言語モデルを用いることで、極めて精巧で違和感のない詐欺メールが、多言語で大量に自動生成されるようになりました。
また、AIによって生成された偽の音声や動画を用いる「ディープフェイク」の悪用も現実の脅威となっています。経営層や取引先を装った偽の動画でWeb会議に参加し、巧妙な心理戦を仕掛けて不正な送金を指示するといった、ソーシャルエンジニアリングが実行されています。
加えて、プログラミングスキルの低い攻撃者であっても、AIの補助を受けることで未知のマルウェアを短期間で開発したり、標的サイトの脆弱性調査を自動で行ったりすることが可能になっています。これにより、サイバー攻撃の参入障壁が下がり、攻撃の総数が増加傾向にあります。
③ AIシステム自体を標的とした攻撃
AIサービスの提供や独自のAIシステムを運用する組織にとっては、AIのアルゴリズムそのものを狙った攻撃への備えも必要です。
代表的な手法に「プロンプトインジェクション」があります。これは、AIに対して特殊な細工を施した指示を与えることで、システムが本来設けている制限を回避させたり、内部の機密情報を出力させたりするものです。
また、開発段階や運用中の学習データに対して不正な情報を混入させる「学習データへの毒入れ(ポイズニング)」という攻撃も存在します。これにより、特定の条件下だけでAIを誤作動させるバックドアを仕込まれるなど、従来のセキュリティ対策では検知が困難な脅威が顕在化しています。
「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が上位にランクインしたことは、AIがもはや特別な技術ではなく、日常的なインフラとして攻撃の対象や手段になったことを示しています。組織に求められているのは、リスクを恐れてAIを全面的に禁止することではなく、リスクを正しく評価し、多層的な防御を講じることで「安全に使いこなすための体制」を確立することではないでしょうか。
個人への脅威は? 〜久しぶりの脅威が再ランクイン
10大脅威は、組織に対するものの他に、個人に対するものも発表されていますので、確認していきます。
個人への脅威についても11年連続が目立ちます。インターネット上のサービスへの不正ログイン、クレジットカード情報の不正利用、ネット上の誹謗・中傷・デマ、不正アプリによるスマートフォン利用者への被害の4つです。
そんな中、4年ぶりにランクインした脅威があります。それは、「インターネットバンキングの不正利用」です。
今更という気もしますが、あえて再ランクインしているということは、インターネットバンキングの不正利用が増えているのでしょうか?昨年は、インターネット証券への不正アクセスのニュースを良く見かけたように思います。
そこで警察庁のデータを確認してみると、令和5年から大幅にインターネットバンキングへの不正アクセスは増加しています。件数も金額も大きく伸びており、一件あたりの金額も徐々に拡大しています。
ますますインターネットバンキングを利用するときには、URLからログインをしないことや、他人にワンタイムパスワードを教えないなど、注意をしていかねばなりません。
https://www.npa.go.jp/hakusyo/r07/honbun/html/bb3312000.html
まとめ
セキュリティ対策の難しさは、「一度実施すれば終わり」ではない点にあります。毎年のように新たな脅威が現れる上、より安全なセキュリティ規格も次々に登場します。
そのため、社内のセキュリティ状況を定期的に見直し、棚卸しすることが求められます。毎年発表されるIPAの「情報セキュリティ10大脅威」を確認することは、自社のセキュリティ対策を振り返る良い機会となるでしょう。
特に、今年は、生成AIに対するリスクに備える1年となりそうです。